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FILE: 004 量子、ラジオに乗る page1

リスナーのみなさん!ついてきてますか?

「くにまるアカデミー」は、最先端研究を採り上げ、一冊の本を手がかりに、その世界を著者に語ってもらおうという講義形式の情報コーナー。今回は「量子」および「量子コンピュータ」という研究にフォーカスし、根本香絵博士の『ようこそ量子』を採り上げていただきました。コーナー開始の合図に"始業のベル"が鳴り、軽快なファンファーレとともにスタートしたのですが……。さて香絵博士は、こんなふうに量子をご紹介してきましたよ。

●「量子は概念である」ということについて
世の中には電子、原子、光子のような物質があり、それらを実際に観測することができます。ただ量子というのは、電子でも光でも、また別のものでも同じように当てはまる考え方であって、それ自体が目に見えるものではありません。

量子が初めて見出されたのは、実は光の中なんです。光が粒のようなものであるということをアインシュタインが発見し、それを「Quantum(現在の訳語では「量子」)」と呼んだのがそもそもの始まりです。

ところがその後、光だけではなく、どんなものにもこの性質があるということがわかり、私たちのこの世界というのは、量子で出来ている、量子的なふるまいをする世界から成っているということになったのです。

邦丸さん:「さあ、リスナーのみなさん! 今、ついてきていらっしゃいますか?」

●情報処理における量子の優位性について
現在のパソコンはデジタル信号(0と1)の組み合わせで情報を処理しています。0であったら1ではないし、1であったら0ではない。ところが量子コンピュータというのは0であると同時に1でもあるような状態をうまく活用していこうというものです。ただこれは、日常感覚からすると別のものと思っていることが同時に起こっているわけですから、ちょっとわかりにくいですね。

現在のコンピュータは0と1しかないので、味覚でいうとたとえば「あまいとからい」しか表現できない。一方量子コンピュータは、味が「うすい/濃い」とか、濃いにもいろいろな濃さがあるというように、「あまい/からい」とは別の方向性も持つことができる。つまり現在のコンピュータでは1つの方向性しかなかったのに対して、量子のほうは深いというか、たいへん「広い」世界を持っていると言えるのです。

●量子に特有な「量子状態」について
女性にプレゼントをしようという男性の場合を例に考えてみましょう。男性が「服がほしいの? バッグが欲しいの?」と訊ねたとします。ところが女性は「スカート」が欲しいとする。男の人からすると、服ならいいだろう、靴ならいいだろうと思うかもしれないけれども、そこには女性の心の「広さ」、複雑さみたいなものがあるわけですね。服でもいろいろなものがあるし、靴にもいろいろ……というように自由度として使える世界を持っている。これを男性から見ると──確かに、よくわからないんです。

邦丸さん:「わかんねーよ、というのをエネルギーと考えればいいんですか?」

女性の"心の状態"を知るには、また同じような時に、質問を変えて聞いてみないといけないんですよ。たとえば「靴それともアクセサリー?」というように。質問によって何度も測定することにより、だんだん心の状態、すなわち"量子系がこういう状態にある"ということがわかってくるのです。