量子情報の最先端をつたえる
Interview #017

大森賢治教授分子科学研究所
公開日:2015/09/??

前々回「ようこそ量子特別講義」と題して、「そもそも量子力学」とは?」を中心にご紹介いただいた、分子科学研究所の大森賢治教授。今回はふたたびご登場いただき、研究室の最新の取り組みや成果を紹介していただきましょう。大森研は、2つの対極的な性質を持つレーザーを高精細にコントロールできるという、世界で唯一の研究室だといいます。そこでは、量子的な現象を世界最速で捉えようというチャレンジが、日々続けられています。

【1】波はいつどのように粒子へ変化するのか?

粒子を検出したのはスクリーンである

まず前々回ご紹介したヤングの実験(→#003図参照)を思い出してください。2つのスリットを通過してきた光は、スクリーンにあたり、私たちは光を確認することができました。つまり、このスクリーンは光の「検出器」という役割を持っていましたね(→#015参照)。このスクリーンをちょっと前に動かしてみる……そうすると、光の干渉がそのスクリーン上で起こります。もし後ろに動かしたら、やはり少し後ろのスクリーン上で起きる。ということはつまり、このスクリーンという検出器の中で何かが起こっていると考えるのが自然です。検出器はものすごく多数の原子核と電子の集合体ですから、「巨視的な固体」と呼ぶこともできます。ここで何かが起こっているわけです。

馬の4本足はどのように地面を蹴っているか?

ただし「それはものすごく速く起こっている。あまりに速すぎるので、不連続な変化であるように見えてしまうのではないか?」とわれわれは仮説を立てました。たとえば馬や犬など4本足の動物がどのように走っているか、だんだん写真の技術が発達してきて短いシャッター間隔でコマ撮りしてみたら、4本とも地面から離れている瞬間があることがわかったという例があります。高速化のテクノロジーによって、より細かい動きが見えるようになり、断絶されていた瞬間がつながっていく─科学の歴史はこのような発見の繰り返しである、と言ってもよいのではないでしょうか。

もっと高速にすれば、時間発展が見える

化学反応も同様です。実は以前、私は化学反応をどんどん高速で観察したら、何が見えるかという実験をやっていました。化学反応というと反応物Aと生成物Bがあって、その間が矢印かなんかで結ばれている(笑)。しかしAがいきなりBに変わるのではないんです。その間に時間発展があるんだということを、実験室でこれまで何回も見てきました。1990年代以降は、非常に短いパルスのレーザーが実験で使えるようになったので、分子や原子が衝突してどう時間変化していくかをリアルタイムに見る実験を行ってきました。実験装置を見ながら、やっぱり物理系ってこうやって連続的に非常にダイナミックに時間発展していくんだな、っていうのを実感として持っているわけですよ。

量子の世界をのぞいてみよう
Welcome to the Quantum World #017

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