量子情報の最先端をつたえる
Interview #020

トーマス・ブッシュ 准教授 沖縄科学技術大学院大学
公開日:2016/05/16

【2】グラフに現れた、見たことのない「横ばい」

まずは極端な場合を「近似」で理解する

理論物理学ではよく極端な場合に注目して、そこから物質の本質的な性質を見ようとします。というのもそのような場所では近似がよく成り立ち、数理的処理を入れることによって解けるからです。ボース粒子を輸送することを考えてみましょう。1次元でAのトラップにいるボース粒子をBのトラップへ輸送します。光の分野ではよく使われる手法を応用して、その時にあたかも途中を通らないようにAからBへ徐々に粒子を移動させます。これは粒子が1つの場合ですが、2つあったらどうなるでしょうか? その場合は、粒子間の相互作用を考えなくてはなりません。そこで、この粒子間の相互作用の大きさがゼロの時から、極端に強い無限大の時までを考えます。無限大、つまり十分強いときには、2つの粒子は同じところにいることはできないので、まるでフェルミ粒子のように振る舞います。(フェルミ粒子は、すべてが同じ状態をとれるボース粒子とは真逆なので、2つの粒子が同じところにいることはできません。)相関がゼロと相関が十分に強いときは、粒子は別々なので、同じように輸送されていきます。それでは、その近辺にあたるゼロのあたりと、十分に強いときよりはちょっと弱いときは、どうでしょうか? この領域では、それぞれに近似がよく当てはまり、解析的に解くことができます。相互作用によって2つの粒子を同時に輸送することができなくなり、この輸送現象は壊れていきます。

減衰したはずの現象が再浮上する!?

ただ、これで私たちがみることができているのは、全体のほんの一部なんですね。ゼロの付近と無限大付近の間に広がる広大な領域については何もわからないわけです。ここは近似がききませんので、そのまま解く必要があります。実際解いてみると、実は、輸送現象が完全に回復するんです。最初は計算を間違えたのかと思ったのですが、計算する点を変えてみても、同じような結果がでるので、すべての領域で解いてみました。そうすると、真ん中に輸送現象が完全に回復した領域が大きく拓けていることがわかったのです。こういった予期せぬ振る舞いは、解析的な解があって、はじめてその背後にある理由がわかってきます。今までみられなかった領域で、より多くの粒子がある場合に何か起こっているのか、今とても興味を持って研究を進めているところです。

世界の様子をながめてみよう
Welcome to the Quantum World #020

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