第41週:量子コンピュータとは何でしょうか。
2008-08-22掲載

さて、今週からはいよいよ
量子コンピュータをテーマに
お届けしてまいります。
その名も「量子コンピュータ編」。

そこでまず今週は、
「量子コンピュータって何?」
という基本のところから
押さえていきたいと思いますよ。

量子コンピュータといえば
リョーシカは専門中の専門ですから
どーんとおまかせください。

(もしも専門的に知りたいという方は
岩波書店『科学』2007年10月号に
量子計算の記事が掲載されていますので
どうぞご覧ください)

というわけでウェブのほうは
今週もリョーシカ流にまいりますよ。
GO! GO!

わたし ああ、リョーシカ!
今回からのテーマですがね、
お茶を濁すようですが……

リョーシカ
お茶ですか。。。


わたし いや、その、量子コンピュータについては
わたしはリョーシカの日頃のご研究ぶりも
知ってるわけですが……

その一方で、ウェブで公開したりとか、
こうするとできるとかいう話をね、
耳にすることもあるんですよ。

リョーシカ
量子コンピュータを、ですか?


わたし はい。そういうこともなくはないと。
たとえばニュースなんかでも
素子を開発したとか何とか……。


リョーシカ うーん。

では、量子コンピュータとは何か
というところから
説明していきましょうか。

わたし
いーですね、それ。


リョーシカ 量子コンピュータというのは、
量子的な状態を使って、
情報処理しようというものです。

わたし
ふむふむ?


リョーシカ 量子ビットひとつでは、
とても計算できませんから、
たくさんの量子ビットを使って
計算します。

わたし
2量子ビット以上ですね。ぞろぞろと。


リョーシカ はい。
1量子ビット操作と
2量子ビット操作を
組み合わせることで、
量子情報処理ができることが
理論的にわかっています。

わたし 2量子ビットと言えば……
エンタングルメントですねえ。


リョーシカ そうです。
エンタングルメントのような
量子に特徴的な性質を
うまくコントロールして
量子情報処理を行っていくことになります。

しかし、
量子の性質は壊れやすいですから、
情報処理のプロセスで、
古典的な状態へ変化してしまったら
ダメなんです。

わたし ということはつまり……
量子の状態を保つのは難しいけど
もし量子系をうまく操作できれば
私たちがよく知っている古典的な物理系では
とても考えられないようなことができる
んじゃないかってこと?

リョーシカ ええ。量子計算というのは、
古典計算では達成できない
たいへん高速な演算が可能である
と期待されています。

わたし 量子コンピュータができたら
何を解いてもらうんですか?


リョーシカ 可能性としては、今まで解くのに
長大な時間がかかっていた問題が
解けるようになるとか、
複雑な系が解析できるようになるとか、
いろんなことが考えられます。

イメージフォト2

リョーシカ ただ、量子コンピュータが本当に出来るのは
実際にはまだまだ将来になると考えられます。

今注目されているのは、やはり
量子コンピュータの元になる素子を
どういう物理系をどのように使って作るのか
というところですね。

たくさんの量子ビットを操作して、
計算のプロセスを導き、
正しい解を得るためには、
まだまだ超えなければならない壁が
いくつも立ちふさがっているんです。

わたし ということは、そういう状況の中で
何が実現できたのか、というところを
ニュースなんかでは
よくよく読まなきゃいけないんですね?

リョーシカ 何をどう実現したのか、ですね。

量子コンピュータと言っていても
量子コンピュータのシミュレーション
になっている場合もあります。

イメージフォト3

わたし
なんかミョーにありがちですね、それ。


リョーシカ 古典的な場合なら、たとえば現在の
コンピュータ業界でもよくある話題として
「素子を開発した」とか
「ゲートができた」というニュースがありますが、
これはたった1回できたという話ではなくて、
何回でもできるし、ずっと使える。

そのように信頼性ある技術を開発した
ということを意味しますね、ふつう。

わたし えっ?
そうじゃない場合があるんですか?


リョーシカ 量子の場合は、古典的な場合と違って
やはり壊れやすいという性質があります。


イメージフォト1

わたし デコヒーレンスですね。
(第17週を参照)


リョーシカ そうですね。デコヒーレンスのように
量子に特有の問題があって
素子として動いたといっても
技術として信頼性が問えるような
開発段階にあるわけではありません。

量子系で、ある特定の動作ができた
というのを示すこと自体が
成果であるような段階ですね。

ですから、全部量子的に動いているのか、
量子性が確認されているのかどうか、
という点が大事なポイントです。

また、できたという素子を集めても
量子コンピュータになるわけでは
ありませんから、
現実的な量子技術としてどうなのか、
将来性や拡張性を備えているかどうか、
といった点をいろいろと
考えていかなければいけません。

わたし なるほど。

でも……ちょっと待ってくださいよ。
量子ビットを用意して、
ぞろぞろといっぱい並べて、
エンタングルさせてやって……と。

で、これでどうやって計算するんですか??

リョーシカ
今週はこのくらいにしましょうか。


わたし
ええっ! マテ・リョーシカ!


(つづく)



週刊リョーシカ!
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さて、今週から
「量子コンピュータ」編です。

「量子コンピュータ」っていう言葉は
聞いたことがあるけれど
それがどういうものかは、現物もないし、
なかなかイメージしにくいですよね。

しかし、現在のコンピュータが
このままスピードアップして発展すると
いずれ量子の影響が無視できない領域、
すなわち「量子領域」へ突入します。

その時、コンピュータはどうなるのか?

しかも有名な「ムーアの法則」によれば、
量子領域への突入の時期は、
もう、かなり近づいているんです。

そんな視点からも
世界の注目を集める量子情報処理。
『週刊リョーシカ!』の来週は、
その計算を行う広いフィールドに
注目していきますよ。

来週もお楽しみに。


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