2009-05-01掲載
町の中学校に、ある日
マトリョーシカにそっくりな人がやってきました。
実は、あまりにもマトリョーシカにそっくりなので、
先生たちはみんな教員室の窓から
その姿が校舎の方へ近づいてくるのを、
じっと見ていたのです。
「どのような御用でしょうか?」
ちょっとあわてていた副校長先生は、
3年生の歴史の教科書をかかえたまま、
教員室から飛び出してきて言いました。
だって、もし「不審な人」だったら、
大変ですものね。
しかし、マトリョーシカにそっくりな人は
もちろん不審な人ではありませんでしたし、
むしろとっても静かに言いました。
「私はリョーシの国からやってきました」と。
そして副校長先生が持っていた教科書を見て、
「それは歴史の教科書ですね?」
と言いました。
「しかしながら、世界はそのようにはなっていません」
そういうと、彼女は、
薄いポケットから薄い本を取り出して、
さらさらと開きました。そして
「世界はこのように記述されるのです」
と言うのです。
「これは、リョーシの国の考え方ですが」
(
後半
へ続く)
さあてと、今週は、ついに
アンケートが30票を超えました!
みなさん、ありがとうございます。
いやーしかし、今週は
みなさんがなかなか
リョーシのクイズに答えてくださらない
その理由がわかりましたよ。
何なのですか?
つまりその……
ユーウツなんですよ。
量子について考えることって。
……
頭の中に雲が張り出してきて
現実が遠のいちゃうんですよ。
ではさっそく、いつものように
現実のアンケート集計の結果を
教えてくださいな。
はいっ!
ではいきますよ!
今週は2009年4月24日の集計で、
回答数が30票でした。
量子に特徴的な性質に「重ね合わせ」
というものがあります。
どのようなものだと思いますか?
という質問で、
「2枚の円盤を重ねたような構造」14 票(47%)
「絵には描けない」16票(53%)
という結果でした。
僅少差でしたねえ。
で、どっちが正解なんですか?
「重ね合わせ」は、
量子にたいへん特徴的な性質です。
しかしこれがどうなっているかを
絵などに描くことはできないんです。
確かPART1でも、「重ね合わせ」を
考えたと思いますよ。
「重ね合わせ」といえば──
PART1 第16週:
ああでもあり こうでもある「重ね合わせ」
2007-02-15掲載
でした。うむむ。
うーん、ひょいっとこんな感じ↓だって
いいような気がするけどなあ。
たとえばデジタル符号の「1」と「0」は、
必ずどちらかになるように
作られていますね。
「ほとんど1」とか、
「少しだけ1」とかいう場合も
必ずどちらか一方として処理していきます。
ところが量子的な世界では、測定すると、
この「0」または「1」を
測定の結果として得ることができます。
この性質を「離散的」と言います。
ところが測定する前の量子が
「0」または「1」のどちらかの状態だったかというと
なんとそうではなく、
「0」でもあり「1」でもある状態
にあったのです。
それが「重ね合わせ」ですね!
しかしそれをどうイメージしたら
いいのか、ってとこで、
いつもつまずいちゃうんだよな。
それでいいんですよ。
つまり、「重ね合わせ」というのは
「0」と「1」が同時に起こっている状態です。
さてここで、「0」か「1」かを測定します。
測定したのだから、当然、
「0」か「1」か、どちらかの結果が出ますね。
しかし量子では、「同時に起こっている」ので
測定ごとにある時は「0」、またある時は「1」というように
まちまちの結果が出る。確率的になっているんです。
すると、2つとか4つとかじゃなくて
もっといっぱいあるのかな?
はい。その通りです。
ところが、結果だけ見ると、
このように確率的な現象というのは
私たちの現実の中にいくらでもあります。
たとえば、あみだくじとか。
それとか、宝くじとか。
そうですね。そのように確率的な現象は
測定した結果としては同じですが
「重ね合わせ」ではありません。
だからイメージしにくいんじゃないでしょうか。
そうかあ。
はい。では今週は、このへんで。
ええっ!
(
前半
のつづき)
そのとき、副校長先生の頭の中に、
それまでぼんやりと浮かんでいた疑問が
すっきりとした質問の形になりました。
「あの、当中学校の父母の方ですか?」
「もちろんです!」と
マトリョーシカにそっくりな人は驚いて言いました。
「そうでしたか」と
副校長先生は少しがっかりして言いました。
もういちど頭の中を探してみました。
そして、疑問に思っていたことを見つけて
率直に質問してみました。
「世界は、私たちが持っている本に書いてあるように
なっていますし、それで問題ないですよ。
どうしてあなたはそのように記述するのですか?」
「ほんとうに問題ないのですか?」
「ええ、たぶん」
「現在においては、
小さいスケールに入っていくと物理現象は
リョーシ的な法則にしたがっているということが
わかっています」
「わからないな」
と副校長先生は言いました。
「でも、面白い考え方ですね、その……
あなたの国の考え方は」
「リョーシです」と彼女は言いました。
「ああ、リョーシでしたね」と副校長先生は言いました。
今週はフィクション形式でお送りしました。
さて来週も
『マトしき週刊リョーシカ』をどうぞお楽しみに!
まだまだ続く『マトしき週刊リョーシカ!』
アンケートも引き続きよろしくお願いいたします。
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