第6週:粒子で波動と言いますと?
2009-04-24掲載


「数学は科学の女王」と言われます。
これに対して……
じゃあ「王」は誰なの?
という質問が出るのもごもっとも。
ある数学者は「王は物理学では?」
と答えています。

なるほど。

この話、後半へ続きます。
まずはリョーシの話から。

今週も、どうぞ。

段落替え

わたし さてと、今週はリョーシ猫にもわかる
ひっかけ問題でした!


リョーシカ
そうなんですか?


わたし はい。
答えてくれた方、ごめんなさい。
リョーシの基礎、
っていうより、量子力学誕生の歴史
ってやつを読むと必ず書いてある、
量子といえば「不確定性原理」と並んで
とっても有名なテーマ、
「粒子」と「波動」の話でした。

ちなみに、この話は
『週刊リョーシカ!PART1』の
第4週:絵にも描けない○○さ。
第5週:リョーシとチョコレート。
にも絵入りで掲載していますので、
ぜひ併せてご覧ください。

リョーシカ
はい、そうでした。


わたし というわけでですね、
そのアンケートの結果を発表します。
じゃーん! 
なんと数字が、感動的なんですよ!
まずはグラフからご覧ください。


アンケート結果06

わたし ね、まっぷたつ。
今回は2009年4月17日の集計で、
回答数28票のうち
粒子 14票(50%)
波動 14票(50%)でした。


リョーシカ ほんとうですね。
みなさん、ありがとうございました。


わたし
では、答えをお願いします。


リョーシカ はい。
量子は粒子であり、波動です。
粒子というのは、1つ2つと数えることができるもの。
波動というのは、海岸に打ち寄せる波とか、
空気中を伝わってくる音などのようなもの。
この二つの相異なる性質をいずれも備えているのが
量子です。

わたし
ふむふむ。


量子ビット模型で遊ぶわたし

リョーシカ
わかったんですか?


わたし いやぜんぜん。
……だって
見たことないですもん。


リョーシカ
私もです。


わたし でしょう?
だからヤなんですよ、ブツリは。


リョーシカ
といいますと?


わたし つまり………わたしが思うには、
数学だったらほんとに途轍もない数字、
たとえば「不可思議」や「無量大数」だって、
それからほら「虚数」や「六次元」だって、
見たことなくても、イメージできなくても
概念なんだから、それでいいんだ
ってとこあるじゃないですか。

リョーシカ 数学は、ものごとを考えるのに
たいへん有効な道具です。


わたし で、それに引きかえ、ブツリの方は、
物理がそうと言ったら、
自然界がそうなっていなきゃ
ヘンですよね?

リョーシカ ああ、それは話が逆で、
自然界がそうなっているから
物理がそうなっているので、
またそのことが、
検証されていかなくてはなりません。

わたし そうそう、そうこなくっちゃ。
それなのに、というか、それだからというか、

リョーシは概念であり(第5週を参照)
かつ自然界にいくらでもある。(第4週を参照)

誰も見たことがないけれども
「波動」と「粒子」の性質を兼ね備えている。

リョーシカ
その通りです。


わたし って、いったいどーゆーことなんですか?
わけわかんないですよ。


リョーシカ うーん……では、
リンゴが木から落ちるのを見て、
なんで落ちるのだろうと、考えます。
それは「万有引力」というものがあるからだ。


わたし
ニュートンですね!


リョーシカ そうです。
しかし、私は「万有引力」を
見たことはありませんよ。
ありますか?


ニュートンの万有引力の法則

わたし
???


リョーシカ 私たちは「重力」は知っていますね。
でも物と物の間、たとえば2本のペンの間に
力が働いている、
というのを見たことありますか?


わたし ないです。

しかし………それ、
万有引力の法則なんですか?

リョーシカ
そうですよ。



わたし それじゃあ、色鉛筆と色鉛筆の間には
万有引力が働いているんじゃないですかね、
ビビッと。

リョーシカ さて、では量子へ戻りましょう。

では、リンゴやボールというサイズではなく、
物をもっとミクロに見ていったときに、
そこでどんなことが起こっているんだろう?

そこには、それまで波だと思っていたものが粒子であり、
粒子だと思っていたものに波の性質がある、
物質がみんな波であり、粒子であるという
別のルールで成り立っている世界がありました。

量子的な世界の発見です。

これが、ニュートンの古典物理学に代わって登場した、
量子物理学です。

わたし ということは──
物はみんな粒子であり、波なんですか?


リョーシカ
はい。


わたし むむむ。
なんかすっきりしないですよ。


リョーシカ でもさっき、
見たこともない「万有引力」を
あると思ったでしょう?


わたし うーん。………ってことは
あんまり理由なく、
すっきりしたり、すっきりしなかったり
してるだけなのかな……?

ここで、エイっと、物は波で粒子だ!
と思っちゃうとすると、どうなるのかな?

リョーシカ
ふむふむ。なかなかいい調子ですよ。


わたし ええと、ええと。
………やっぱり、すぐには難しいけど、
「波で粒子」だと考えるからこそ
説明できる現象なんかも、
きっとあるんでしょうね?


リョーシカ はい。
いろんな場合について、
こういう時は、どうだろう?
ああいう場合は、どうなるだろう?
というふうに考えるのは大切なことです。


わたし すると、概念的というか理論的に
正しいと確かめられたことが、
ブツリの場合、今度は
わたしたちの世界を振り返って
そこへばしばしと当てはまってくるわけですね。

もしこれが、すっきりわかってくると……
いやあ、ブツリって、なんだか痛快ですね。

リョーシカ
ふふ。smile


わたし リョーシのおもしろさが、
だんだんわかってきたような、
かといって、
不思議さはどんどん増してきたような。

リョーシカ
では今週はこのへんで。


わたし
ええっ! マテ・リョーシカ!

段落替え

「数学は科学の女王」と言われます。
この話、冒頭で

王様:物理学
女王:数学

ということで一応決着を見ました。

ところが、これに対して……
「いや、哲学こそが王なのだから、」
という新しい見解もありますよ。
「女王とは、言語学である」

リョーシ猫もびっくりの新説、
であります。

ところがリョーシカに訊くと
「ああ、それはそうでしょう」
と言います。
「なぜですか?」
「数学が、道具立てだからです」
ということは、言語も哲学の道具立て。
「そのとおりです」

なるほど。

しかし王様や女王様なんて
たいへんですよ、きっと。
猫ぐらいにしとこっと。

というわけで、エンディングは
毎回で恐縮ながら、
アンケートのお願いです。

ご回答はこちらから。

来週もどうぞお楽しみに。


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