2009-09-28掲載
『ふしぎの国のアリス 』
の序盤で、
庭へ出ようとビスケットを食べるアリス。
というのも、一方は大きくなる
(ので、机の上にあるドアのキーをとることができる)
もう一方は小さくなる
(から、ドア下の穴から抜けられる)
というシーンがありました。
このくらいの伸び縮みなら、
人間もイメージするの、得意なんですけどね。
これが10の10乗とか20乗とかなると……
なかなかパッパと頭を切り換えられません。
なぜかというと、そういうスケールの違うことは
日常ではあまり体験されないからですよね。
しかし実は、そういうスケールの違う現象が
日常にいくらでも起きている。
そっちのほうへイマジネーションを
ちょっと切り換えて見てください。
というわけでスケール編も後半、
まいりたいと思います。
●小さい数を表現する「マイナスn乗」●
さあて、
今回は小さい方の話ですね?
はい。
物理の世界で小さいというと
原子とか、分子とかでしょう。
ええ。
さらにもう少し小さいほうを見ると、
電子など素粒子の世界が見えてきます。
どのくらい小さいんですか?
電子の質量は約9×10のマイナス31乗キログラム。
ということは、
90000000000000000000000000000000
ニウモン猫さん、違います。
小さい
んですよ。
ががーん。そうだった。
0.0000000000000000000000000000009
確かに。
こうやって書くと小さい気がします。
そうかなあ。
あまりにもめんどくさくはないですか?
だって書くときも、読むときも、
いちいち数えなければなりませんよ。
そうですねえ。
10の-31乗っていうほうが
やっぱり便利かも。
●化学反応を思い出すと……●
だけど本当は、なんていうかな、
どっちで書いてもいいんだけど、
そういう小さな世界を
想像するのが、苦手なんだよな。
確かに、私たちは、自分たちの
生活のスケールに合ったサイズには、
敏感にできていますよね。
うん。
だったら、そのスケールに置き換えてやれば
わかりやすくなりませんか?
ああ、なるほどー。
たとえば、炭素Cと
酸素O
2
が化学反応を起こすと、
CO
2
ができます。
CO
2
は、二酸化炭素ですね。
あ、そうか。
●炭素12グラムずつ数える「モル」●
化学反応を考えるときには、
原子や分子がひとつずつ、
どのように反応するかを見ていきます。
ところが実際には、量がとても小さいので、
炭素原子ひとつ、とか
酸素分子ひとつ、といった量を
取り扱うことができません。
そこで「モル」という単位が
登場するのですよ。
「モル」は「モルモット」のモル!
いや、そうではなくて、
炭素原子を12グラム分取ってきて、
これを1としたのが「モル」という単位です。
12グラムなら測りやすいですよね。
ただし、12グラムもあるのですから、
その中に入っている原子の数は
相当なものです。
それがいくつあるか?、というふうに
正確な数を追っていくと
また小さな数を扱う問題に戻ってしまいますから
化学反応をみるには、
この1モルというあたりにスケールを合わせて
見ていこうというわけです。
うーん。
スケールと精度って、
意外と関連してるんですねえ。
●化学反応を見るのに便利な「アボガドロ数」●
炭素を12グラムとってきましたが
これがなぜ12かというと、
質量からきています。
原子はそれぞれ持っている質量が異なり
その比がわかっています。
たとえば炭素Cと酸素Oなら
炭素:酸素 は、12:16 となります。
※炭素原子は基準値なので12ですが
酸素原子はおよそ16(15.9994)です。
すると、炭素原子12グラムの質量に対応して
同じ数の酸素原子を取ってくるには、
16グラム必要です。
さらに今使おうとしている酸素分子は、
Oではなく、O
2
ですから、
16の二倍、32グラム必要ということになります。
ふむむ。
モルというのは、
原子とは限らず、分子になっていれば分子で数えます。
先ほどの例ならば
炭素原子1モル(Cを12グラム)
酸素分子1モル(O
2
を32グラム)
が化学反応したら二酸化炭素1モルができます。
二酸化炭素1モルは、44グラムです。
炭素原子12グラムの質量を基準にしてるのに
扱うものによって重さが違うというのが
ちょっと迷うけど、
同数とってくるんだから、
1つで重いものは、とってきた1モルも重くなる
というのは当たり前、なんですね。
ではその「同数」というのはいくつか
と数えると、およそ6.02×10の23乗個であり、
これをアボガドロ数といいます。
なるほど。つまり……
1モルとってくれば
いつも必ず、アボガドロ数個
入っているわけですね。
うーん、ニウモン猫も
ちょっとスケールの違うことを
考えなきゃいかん。
大きいばかりがいいのではありませんよ。
さて今回は、
小さいスケールを見る時の話でした。
今週は、このへんで。
いかがでしたか?
そうはいってもしかし、
頭の中のスケールを切り換えるのって
結構大変な思いをしたりします。
『週刊リョーシカ!』で
ぜひ鍛えてみてくださいね。
ではまた来週。