第29週:ようこそ量子、再び。
2009-10-19掲載


『週刊リョーシカ!』PART2も
残すところ、あと2回。

そこで今週は、スケール編の総まとめとして
やっぱり量子を採り上げていきたいと思います。

2006年に『ようこそ量子』が出版された、
その頃と比べると、
最近はずいぶん世の中に
「量子」が浸透してきたな
という印象を受けます。

そういうわけで、改めて
じゃあ量子ってどんなもの?
というFAQを、ラスト2回にわたって
お届けしたいと思います。

リョーシ猫が担当いたします。

段落替え

●「量子」は「漁師」を塗り替えるか?●

わたし 『週刊リョーシカ!』PART2の最初に、
リョーシの読み方はどっち?という
質問をやりました。

リョーシカ
そうでしたね。


アンケート結果01

わたし 2009-03-20の更新記事で、
量子が54%、漁師が46%
という結果だったんですが、
その時点から比べても、
「量子」はちょっと有名になってる気がします。

同じ難しいといっても
たとえば「数学」という言葉を知らない人は
滅多にいないでしょう?

それはなぜかと考えたら、
なにしろ量子は学校で習わない!
ってことに気づいたんですよね。

義務教育でも習わないし、
高校でも習わない。
で、わたしも最近まで、
そもそも量子力学っていうのは、
大学ではどのように教えられているのか?
知らなかったです。

リョーシカ 高校で理系を選択すると
ほんの少し出てきます。

物理学科の学生は必修です。
他の学科では、ほとんど量子力学に
ふれない人が多いのではないかと思います。

わたし 物理以外では、必修じゃないとすると
すごく人数が少ないですよね?

リョーシカ そうなりますね。



●量子の発展史は理解を助けるか?●

わたし それから量子の本では
このようにして量子は発見された
という歴史的な出来事に沿った
ストーリーのものが多いですよね。
量子力学発展史のようなものから、
量子を説明しようというわけです。

リョーシカ それは教科書のような専門書でも
そうですね。
解析力学、特殊関数、微分方程式など
背景にあるものを学びながら
量子力学を学んでいこうというものが多いです。

わたし わたしも『ようこそ量子』を書き始めた
最初のころは、
なんとなくそのように書くと
わかりやすいような気がしていましたが、
ただこの方法は、問題があるんですよね。

リョーシカ
量子を本質的に理解することとは
別のことなんですよね。


わたし そうなんです。
歴史上の人物がどのように気づこうと、
どのように間違おうと、
結局今はそれが検証されており、
その意味で正しいとわかっているのだから、
この現在わかっていることから話を始めよう、
というほうが、
量子がどういうものか、
すっきり把握できるんですよ。

リョーシカ
はい。


わたし たぶん科学も技術も、できてしまえば
できたところから考えたほうがいい。

電話で済むところを、
飛脚を飛ばしたりしないわけで、
昔ながらの飛脚をやってみる、というのは
それはそれで面白いけれども、
また別の興味ですよね。


リョーシカ 新しい概念も、だんだんに
○○ということは、△△というふうにも言える
というふうに、
わかりやすく言い換えられていきます。

時間をかけて、
いろんなところへつながりながら、
理解が深まっていき、
概念そのものも洗練されていくんだと思います。


●『量子力学の考え方』●

リョーシカ 私自身は、今年は
学部生のための教科書のようなものを書きました。


わたし ああ。『量子力学の考え方』ですね。
式いっぱいの本なんですけど、
なぜか式がわからなくても
読めましたよ。

リョーシカ
そうですか。


わたし ええ。あれで式がない本、というのが
あってもいいのかもしれません。

物理学科の学生でなくても、
数式が読めなくても、
背景にあるさまざまな基礎的な素養がなくても、
量子がわかりたい
という点では、同じですからねえ。

リョーシカ
ええ。



段落替え

(つづく)


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