クルマじゃないハイブリッド、の未来。

量子コンピュータはいつできる?

2019.10.07

クルマじゃないハイブリッド、の未来。

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いつものように運転し、今までにない性能を得る

ところで、量子情報の研究者や技術者たちは、現在のコンピュータ技術一般について「量子コンピュータ」に対して「古典コンピュータ」、「量子情報処理」に対して「古典情報処理」というように呼ぶ。なぜなら、量子コンピュータと古典コンピュータは、その原理が、まったく異なるからだ。たとえば現在のコンピュータが「ビット」を情報の単位としているように、量子情報処理では「量子ビット」が単位となっている。ところが1ビットは0か1のどちらかであるのに対して、量子ビットは0と1の「重ね合わせ状態」と呼ばれる状態から成る。これが「シュレディンガーの猫」で知られる半死半生の状態、すなわち0であると同時に1でもあるという、量子特有の非常に自由度の高い状態である。

大野教授のハイブリッドとはつまり、シリコンという「古典」と量子ビットという「量子」のかけ合わせである。

「われわれが提案するデバイスは、トランジスタと同じように扱えて、操作や測定量も変わりません。その中のオン/オフだけが量子的に動作するようにうまく形式化することによって、量子を知らなくてもそのシステムをデザインすることができます。」原理の異なる量子のことはさておき、ハイブリッドカーと同じように、ユーザは使い慣れた古典クルマのつもりで運転すればいい、というわけだ。

では、量子ビットを導入することで、どんなメリットがあるのだろうか? 「たとえば従来型の認証システムに量子をちょっと混ぜたり、現在最高精度のセンサーにさらに感度が必要だという部分に、スピンで磁場を検出する量子センサーを使ったりすることで、従来技術では実現できない高精度・高精細な性能をもたらしてくれます」と、大野教授。「しかもシリコンはそのまま既存の電子回路に接続できるので、磁気センサーとして利用したり、スマホの認証に使ったりと、1量子ビットの動作ができるようになるだけで大きく応用が広がります。」

大野圭司教授(理化学研究所)

シリコン不純物中の電子を使って、電子が持つスピンという状態を読み出し/書き出すことができる、新しいタイプのトランジスタを開発。将来的には、「量子ビット(量子)としてもトランジスタ(古典)としても、シームレスに動作するようなデバイスへと発展させたい」と大野教授は言う。