2008-09-05掲載
さて今週は、
量子コンピュータの第3回目。
前回は量子計算の心臓部が
「ヒルベルト空間」で行われる
「ユニタリー変換」である。
ということがわかったわけですが
で、それがいったいどういうものなのか
もう少しイメージできると
いーですよね。
ところがまたしても
「見ちゃだめ」と
リョーシカは言います。
なんで「またしても」かというと
第15週を参照→
こちら。
というわけで、
さっそくまいりますよ。
あ、いたいた、リョーシカ。
2008年の中秋の名月は、9月14日
だそうですよ。
そうですか。
実はわたし、月の満ち欠けって
よくわかんないんですよ。
昔からわからないですよね。
でも実はそうなんです。
ま、今日は月よりも「月見」、
だんごの話にしましょう。
まずはお花を供えて……と。
あ、
「花よりだんご」
といえば、
「秘すれば、花」
ともいいますね。
むむ! リョーシカが
ことわざ
を言うなんて!
※「秘すれば、花」は、室町時代の猿楽師・世阿弥が記した能の理論書『風姿花伝』にある言葉。
量子計算も、計算の途中で
不用意に測定すると、
状態が変わってしまいます。
ああそうだった。
「秘すれば、花」
つまり「見ちゃだめ」ですね?
ええ。見るということは、
測定するということです。
量子計算している系は
量子ビットが複雑にエンタングル
している場合が多いんです。
そういうときに、
たとえ一部でも測定すると、
計算途中の情報を担っている状態が
変わってしまいます。
しかも元の状態には戻せないため、
計算の途中で不用意に測定するわけには
いかないのです。
うーん。
だけど先週は、量子計算とは、
たくさんの「量子ビット」が作っている
「ヒルベルト空間」上で行われる
っていう話だったですよね?
はい、そうです。
このヒルベルト空間の中身というのは、
見ちゃだめなんだけど……
でもいったい
どんなふうになっているんでしょうか?
ヒルベルト空間は、
量子ビットの基底ベクトル
(たとえば0と1)が張る空間で、
量子ビットが取りうる状態は
この空間上の点として存在します。
計算の進行につれて、
その点が答えに向かって移動していく
というイメージですね。
ふむふむ。
また、量子コンピュータの特徴は
並行処理であると言われます。
つまり、いくつかの計算を
同時に進行させるわけですね。
そりゃ、そのほうがいいですよね。
ええ。なぜそのような計算ができるのかというと
量子の場合、0と1が同時に起こっている
「重ね合わせ」という状態が可能です。
言い換えると、
0と場合と1の場合が同時に進行できる。
このことを計算に活かしているのです。
それにはまず、
量子状態を量子的に保たなくてはなりません。
おお、そうか、
秘密にしておくのが量子計算のコツ
というわけで、秘すれば、花
花よりだんご、というわけですね。
えっ?
えーと。続きは来週にしましょうか。
(つづく)
量子コンピュータ編で
これまでわかったことをまとめると──
量子の0であると同時に1でもある
という重ね合わせの性質を使って
ヒルベルト空間という広い空間で
並行処理していく。
でもって、量子計算するには
量子性を保たなければならないので
測定は最後に1回だけ。
──ということになるかと思います。
ちなみにリョーシカは、
この「ヒルベルト空間が好き」
なんだそうです。
なんのこっちゃわかりませんが。
来週も引き続き、
量子計算、行きます。
GO、GO!