2009-09-15掲載
前回
は大きい数の単位を確認しながら
「指数的に増える」様子について考えたり、
それから、工夫してグラフに書く方法も
見てきました。
そこで今週は、
具体的にどんな現象が指数的に増えているのか、
という側面から
「指数的に増える」とはどういうことか
を見ていきたいと思います。
というわけで、
今週はリョーシ猫が担当いたします。
ではどうぞ。
●ねずみもヒトも同じ?●
指数的に増えるというのは
確か
ネズミ算のほう
でしたよね?
はい、そうでした。
まさに天井破りなグラフが特徴的です。
そうそう。
あんなふうに増える現象って
現実にあるんですか?
そうですねえ。
ねずみがそうなのだから、
ヒトでもそうですよね。
といいますと?
ネズミ算式というのは、
2匹が4匹、4匹が8匹、8が16、16が32……
と増えていくわけですから、
人口だっておよそ、
そのように増える可能性があります。
ほんとうにそんなに急に
増えているんですか?
グラフを見てみましょうか。
11th Sep.2009, US CENSUS BUREAUより
がーん!
かなりビックリです。
こんなに急激に増えてるとは、知らなかった!
そうですね。
急激に増えている部分は、
指数的に増加しているようにも見えます。
たいへん急な増え方ですね。
●指数的に増えたあとに●
ほかにも指数的に増えるものって
ありますか?
ネズミ算というくらいなので、自然界のもの、
特に生物の個体数が増加する場合は、
そういう現象が見られることが
あるのではないでしょうか。
それ以外には?
たとえば風邪などのウィルスが、
人のあいだで広まっていく時にも
1人が2人に移し、その2人がそれぞれ2人に移して
……という場合がそうですね。
あるいは卵細胞が分裂する時はどうでしたか?
へっつ? どうって、どうでしたっけ?
卵の中にある核が二つに分かれ
次第に細胞膜も2つに切り離されて、
2つの細胞になります。
人の場合は二等分に分かれます。
これが卵割ですね。
ここから細胞分裂を繰り返して
発生が進行していきます。
1→2、2→4、4→8と増えていくので、
指数的増加です。
卵細胞は最初はこのように猛烈に分裂し、
そのうち次第に分化して
機能が分かれていくのです。
なるほどねえ。
それから、ネズミのような個体が
指数的に増えたはいいけれど
そのまま増加し続けるかというと、
あるところまで来ると打ち止めになったり、
逆に激減したりする
ということが多いです。
それは生物の場合、環境との兼ね合いで
それだけの数が同時に生きられない、
ということが起こるからですね。
確かに。
でも飽和した後はどうなるんだろう……と、
思うと、人類の未来は
あんまり明るくないのかも。
猫はどうなんでしょうか?
???
●ちかごろ話題の「べき乗則」●
ところで最近時々話題になっている
「べき乗則」
ですが、
あの
「べき」
っていうのも
「指数」のことでしょう?
そうですが、べき乗則というのは、
指数的関数とは違うものだと思いますよ。
へっ! そうなんですか?
べき乗則っていうのは、
つまりその、統計データをグラフに描くと
減少にともなって、どんどん減ってはいるんだけれども
なかなかゼロにならない、
つまりグラフが長~く尾を引く「ロングテール」
ってやつですよ。こんな感じ。
ええと……
こんな感じ
でしょう?
(リンク先にグラフがあるのでご覧ください。
外部サイトwikipediaです)
まさに、それです。
指数的増加というのは、
2乗、3乗、4乗……というように
何乗のところ
が変化していきます。
一方、べき乗則というのは、
式に書くと、
何かの定数乗
であって、
これを足し合わせた形をしています。
べき乗則のグラフでは、
減っていく場合ならば、その減り方が
長く尾を引くように、少しずつ残りながらも
減っていくというのが特徴的です。
むむ。……じゃあ
現実の中に、
指数関数で減る場合というのも
あるんですか?
指数的に減少する現象はたくさんあります。
ファイバー中に光を通して
その減衰を見ていく場合などもそうです。
光が進む間に減衰が起こるので、
ある距離まで進んだら光の量が半分になっていた、
という地点が考えられます。
すると、さらにその一定の距離を進めば
光の量は1/4に、
またさらに一定の距離を進めば1/8に
なっているはずです。
このような減衰は、指数的に減少していると
言えますね。
うむむ。そーなのか。
では今週は、このへんで。
ええっ!
ロングテールって
恐竜のしっぽが似合いますよね。
猫じゃなくて。
しかしながら、恐竜どころじゃなく
その長い、ながい、なが~~いしっぽの様が
なんだかひどく
想像力をかき立てるように思うんです。
すごく栄えた要路の市場が
静かな寒村に変わり果てるまで。
ローマの英雄カエサルが活躍した
フォロ・ロマーノの大通りが
土に埋もれて放牧地となるまで。
それがまた掘り返されて観光地となるまで。
そういう、言ってみれば
栄枯盛衰というドラマが
あのべき乗則というグラフの中に
走馬燈のようにというか
ホログラムのようにというか
浮かんでは消えるから、
と言えば、いいすぎ、でしょうか。
別にそうは思わないって?
さて、来週も、
グラフづいてまいりたいと思います。
で、どういう話にしようかな……。