量子情報の最先端をつたえる
Interview #021

久保結丸 研究員 沖縄科学技術大学院大学
公開日:2016/07/15

【3】目標のあるところにハイブリッド

ハイブリッドをうまく始めるには?

ハイブリッドは、ある意味でエンジニアリングの発想だと思います。もちろん物理を究めようとするモチベーションはありますが、まずはある機能やシステムを実現しようという目標がある点が特徴です。僕の場合は、サクレー研究所のグループに元々あった超伝導回路の知識や経験にダイヤモンド中のスピンが加わりました。ただ、その道の専門家と同程度の理解に到達するには時間も労力もかかります。何より、目標はあくまで超伝導系とダイヤモンドスピンの融合でしたので、スピンそのものだけを極めることを目指しても仕方がありませんでした。そこで目的に沿った必要な情報をいろんな人と議論しながら集めたり、取捨選択して勉強したりしていくわけですが……コツがあったら僕も教えてほしいです(笑)。

理解とアイデアを交換する

サクレーにいた時は、ダイヤモンドのスピンに詳しい人たちのいる研究室を訪問して、よく議論していました。実際、研究開始当初の青写真は最終的な形とは全然違うものでしたが、議論の最中にアイデアが生まれたりして少しずつ方針が変わっていったことを覚えています.また、自分の実験を見せて、こんなことが起こっていると解釈してもらったりしたことも、しょっちゅうありました。一例を挙げると、物質を冷やせばスピンの緩和時間は非常に長くなりますが、ある実験でそれがどうしても1秒前後しか保てないことがありました。スピンが専門の共同研究者達と議論をしているうちに、近くに共振器があることが原因で緩和が加速されていたことがわかりました。そしてこれは固体中のスピンではまだ誰も見たことのない現象であることがわかったんです。もう少し正直に言うと、そもそもこの実験自体がセットアップの動作確認のためにひとまず試作してみたサンプルで始めたものでした。いわば本番の前段階の実験という位置づけでしたが、結局サクレーで1年以上計り続けられることになったんです。……サイエンスって、往々にして、予期せぬところから道が拓けるものではないでしょうか。
(文:久保結丸・池谷瑠絵)

久保結丸研究員 プロフィール

沖縄科学技術大学院大学 量子ダイナミクスユニット グループリーダー。専門はハイブリッド量子システム、量子固体デバイス、超伝導量子回路、ジョセフソン接合等。2004年筑波大学卒、高温超伝導体のジョセフソン接合における量子効果に関する論文で専攻最優秀博士論文賞及び研究科長賞受賞、工学博士(2009、物質・材料研究機構、筑波大学)。学振海外特別研究員、フランスのCEA (Atomic Energy and Alternative Energies Commission)サクレー研究員等を経て、2015年より現職、JSTさきがけ研究員兼任。沖縄は「母の故郷でもあるので馴染みのある土地です」という。名は「ゆいまる」と読む。現在自転車で通勤中。

量子の世界をのぞいてみよう
Welcome to the Quantum World #021

  • Pages:
  • 1
  • 2
  • 3