2007-11-23掲載
推理小説では、犯人にはアリバイがある。
というケースがよくありますよね。
"殺人とアリバイとどちらが真実か?"
これを解決したくて、つい読み進んでしまいます。
ところがこれがもし、
「どちらも真実です、ちゃん ちゃん」
なんて言われたら、お話にもなりませんよね。
ところが量子(リョーシ)って、
どうもそういうものらしいんですよ。
じゃあリョーシって、
お話にもならないものなのか?
そんなわけで今週は、
まずは先日わたしが観てきた映画のDVDの話から
始めたいと思います。
リョーシカは映画とか観ますか?
映画観る機会ですか……あまり多くないですね。
わたし、先日DVDでさる映画を観ていたらですね、
なんと「波と粒子」が出てきたんですよ!
へえ、そうですか。
その映画の名は、
『チャーリーとチョコレート工場』
っていうんです。
ふむふむ。
ほんとに観たことないんですか?
ええ。
ウォンカというチョコレート開発の天才が、
何人かの子供たちを自分の工場に招待するんです。
いろんな不思議な機械や
チョコレートの製造工程がでてくるんですが
そのうち「テレビ室」という部屋に入って、
自分の発明について説明するんですね。
ところで、これがたぶん、
「量子テレポーテーション」の話なんですよ。
こちらが原作。
ふむふむ。
ウォンカが波であり、粒子である、
英語だと「ウェーブ(wave)」であり
「パーティクル(paricle)」である、と言うと
科学少年がおかしなことを言うな、
と反論するんですね。
その2つが相反することは物理学の常識だと。
その通りです。
で、その子は結局、非常識な、
別の世界へ行っちゃうんですけどね。
詳しくは映画を観てのお楽しみということで。
なるほど。面白そうですね。
量子が、非常識な考え方であるとか、
あり得ないふるまいをするものだといったことは
英語圏では、ごく軽い冗談として
結構浸透しているように感じますね。
先週も話しましたように、
波であって粒子であるというのはあり得ない、
ということがまず前提としてあるわけです。
それについてはですね、
ほらよくあるじゃないですか、
こっちを立てれば、あっちが立たない。
あっちが立てば、こちらが立たない。
という状態だということですよね。
そうです。
ところがある物が、
ある時測ってみたら粒子だった。
さらにその同じ物が
波であるという証拠が見つかってしまう。
それこそ"アリバイは果たして真実なのか?"
というやつですね。
そこなんです。
ところがこれは両方真実なんですよ。
困ったことに。
おもしろいことに。
するとストーリーは一歩前へ戻って
私たちがこれまで正しいと思ってきた
常識のほうを疑わなければならないわけです。
今まで‘当たり前に’正しいと
基準にしてきたことこそ間違っているんです。
波と粒子は両立しないという考えが間違っていて
真実、両立するんですから。
うーん……。
リョーシって、頭の"しん"が疲れますね。
そうかもしれません。
私たちにとって常識と呼べるほどに
当たり前な考え方を変えるのって、
実はたいへんに厄介なことらしいんですよ。
「あなた、ご自分を会社員と思って
いらっしゃるかもしれないけど、
同時にスーパーマンなんですよ
」
って言われたらビックリしませんか?
自分の周りをうっすら見回しちゃいますね。
しかもそれが真実だ、なんて。
この常識を変えるということが
やはり人間にはどうも難しいらしいんですよ。
らしいって、リョーシカは違うんですか?
いえ、私も例外ではありませんが、
私たちは量子のほうを専門に
ずっと考えているんですよ。
ああ、常識のほうでなく。
ええ。もうずっとあちら側ですから……
というわけで、私、そろそろ
……行ってきます……失礼!
え? ちょっと、
(つづく)
わたしたちの世界では、
会社員であると同時に
スーパーマンである
ということは
映画の中でしか起こりません。
犯人であると同時に犯人でない、
ということは映画の中でさえ起こらない。
そんなの「科学」じゃない、
お話にもなってないじゃん、
とわたしたちは考えます。
いやはや、リョーシって、かなり非常識。
ちなみに「チャーリー……」の本のほうには、
実は波と粒子のことは書いていないんですよ。
この原作の最初の出版が1964年といいますから
この映画が製作された2005年までの間に、
量子の知識のうち常識となった部分が
盛り込まれたと言えるかもしれませんね。
さて。というわけで
来週もどうぞお楽しみに。
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