第9週:マトリョーシカなるもの。
2007-12-21掲載

身近な「物」について、改めて
これは何からできているんだろう?
と考える。

それは物理学を考える、
大事な一歩に違いありません。

でもそれが現代物理学の探究につながるには、
最もシンプルに、そしてシビアに
「物」そのものへと
向かわなくてはならないのでしょう。

だけど、そればっかりでもねえ……。
というわけで、今週は、ごくゆるーく、
しかもこんな「物」を採り上げちゃいました
──では、どうぞ。

わたし ちょっと見てくださいよ、
ゲットしてきたんですよ、これ。


パンダマトリョーシカ大

リョーシカ
あれー。これどうしたんですか?


わたし
実は先日、横浜の中華街へ行きましてね。


リョーシカ
はい。


わたし 売っていたんですよ。
このパンダのマトリョーシカを。
私も実物を見たのは初めてです。


リョーシカ う、うう……
あの、これ開かないのですが。


わたし そうでしょう、そうでしょう。
実は私もね、買ってすぐ、店へ戻って
同じことを言いに行ったんです。


リョーシカ
そうしたら……?


わたし なんと中央から横へ折るようにぱかっと
こんな感じで開けるのだそうです。

パンダマトリョーシカの開け方

リョーシカ なるほど。ちょっと違うわけですね。
というか、形もずいぶん違いますものねえ。


わたし 中身をどんどん開けてみてください。
それがほらね、なぜか2つ目のマトリョーシカが
ずいぶん小さいんです。


パンダマトリョーシカ2体

リョーシカ
ふむふむ。


わたし 他のサイズはぴったり出来ているんですけどね。
でもって、なぜかパンダの鼻が、ハート型。


リョーシカ ふむふむ。これは開けても開けても……
ずいぶんたくさん出てきますよ。


わたし このマトリョーシカは5体組ですから。
最後はおくるみの赤ちゃんの代わりに、
これもたぶん赤ちゃんパンダなんでしょう。

パンダマトリョーシカ5体組

リョーシカ しかしパンダは、
同じ哺乳類の人間と比べても、
とても小さい赤ちゃんが生まれるから、
いちばん大きいマトリョーシカが
母親パンダと考えると、
とてもぴったりしますね。

パンダマトリョーシカ5体組・親子

わたし 母親の巨大さが、いいですよね。

……ところで、わたし、いささか
「物」について考え直しましてね。

リョーシカ
はい。


わたし マトリョーシカなるものとは、
何も外見の形を指すんではないのだなあと。


リョーシカ
ああ、はい。


わたし また3体組でも5体組でも
要するにマトリョーシカっていうのは、
入れ子の構造をしているというところが
マトリョーシカたるゆえんかなと。
たとえばこんなふう……。

マトリョーシカの概念

リョーシカ そうですね。
より本質的だと思いますよ。

見かけにとらわれていると、
ちょっと違うものが登場したときに、
それを概念に合うようにするには、
いちいち概念を変更しなければなりません。

ですからなるべくいつもより究極なもの、
より本質的にそれを表しているもの、
を考えるようにすることが
物理を考えていく上では大切だと言えますね。

わたし うーん、パンダマトを買ったかいが
あったなあ~。


リョーシカ
では来週ということで。


わたし
えっ、もう終わり? マテ・リョーシカ!


(つづく)



週刊リョーシカ!
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「物」そのものの、
しかも、そのどこが本質的なのか、
という見方。
なかなか物理らしくなってきたではありませんか。

「物」といえば、
高い安いといった経済的価値とか、
その物に込められた気持ちとかだったら、
わたしにも大変わかりやすいんですけどね。

さて、来週は2006年最終号になります。
またまたリョーシカ!な展開を
どうぞお楽しみに。

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第1編:マトリョーシカ編
プロローグ~第10週

第0週:プロローグ
2007-10-26
第1週:マトリョーシカの中身
2007-10-26
第2週:いちばん小さいマトリョーシカ。
2007-11-02
第3週:どっちが大きいんですか?
2007-11-09
第4週:絵にも描けない○○さ。
2007-11-16
第5週:リョーシとチョコレート
2007-11-23
第6週:新幹線と量子サイズ
2007-11-30
第7週:それでも電子は回っている!?
2007-12-07
第8週:古い考え方、新しい考え方。
2007-12-14
第9週:マトリョーシカなるもの。
2007-12-21
第10週:「最先端」ってどこですか?
2007-12-28


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