2007-11-30掲載
マトリョーシカのことは、もうみなさんご存知ですよね。
木製のお人形が、サイズ違いの入れ子状になっていて
胴体をぱかっと開けると、中から
一回り小さなマトリョーシカがでてくる
というロシアの民芸品です。
この「一回り小さい」とか、
せいぜい「一ケタ違う」ぐらいまでなら
わたしも感じがつかめるのですが
10の何乗も大きい/小さいというスケール感は
どうもサッパリ、イメージできません。
そんな時のために、東京ドーム○個ぶんとか、
地球を○周ぶんとかいった表現が
用意されているんだろうと思うんですが、
このように具体的なものに置き換わると
確かにグッとイメージしやすくなりますよね。
さて、今週はそんなスケールの話から
量子のナゾに迫ってみたいと思いますよ。
どーでしたか、リョーシの世界は?
ああ、コンフェランスのことですか?
先週、行くって言って出かけられたのは
コンフェランスのことだったんですか。
ええ、ええ。行ってきました。
でもまあコンフェランスへ行かなくても
ふだんでも比較的いつも
量子のことを考えていますけれどもね。
ミクロの世界を追っていくと
ある領域から、物が量子的にふるまうようになる。
量子的なふるまいが顕著になるんです。
量子的なふるまいとは、
一言で言えば、私たちが考える科学の常識に
合わないふるまいです。
量子はそういうたいへん非常識なルールに
基づいているのです。
その領域って、どの範囲なんでしょうか?
今日はぜひ具体的に教えてほしいと思いまして、
実はわたし、単位表というものを持ってきました。
ふむふむ。
これが、メートルより小さい単位の表です。
ほら、
キロキロと ヘクト デカけた メートルが
デシに追われて センチ ミリミリ
っていう、あれですよ。
そこのところだけイレギュラーなんですよね。
ああ、そう、そうですね。
ここだけ単位に細かく名前がついています。
やっぱりほら、そのあたりが
いちばん身近なところですからねえ。
そうですね。人間の身長というのがだいたい
1メートル、2メートルというオーダーですね。
そのあたりをよく使うんでしょうね。
……で、その先の小さいほうを
見ていきたいと思うのですが
この
キロキロからミリミリまで
は
わかるんですが、わたしの場合──
というか一般にそうだと思うんですが──
どうも
10の何乗
とか言われても
ぴんと来ないんですよ。
なるほど。……では
たとえば、不思議の国のアリスのように
ごくごく小さな世界へ入ったと思って、
1ミリが1,000キロに拡大されて見える
と考えてみたらどうですか?
1,000キロといえば……
たとえば新幹線の東京ー博多間の営業キロ数に
ほぼ相当するのではないでしょうか。
なるほど、するとわたしは
東京ー博多間がホントは1mmである
という世界にいるわけですね。
そうです。東京ー博多間が1mmだとして
他の単位にどんどん当てはめていくと
どうなりますか?
ええと、
東京=博多間1,000キロが1ミリなんだから
1マイクロメートルは1kmですねえ。
ふむふむ。
でもってナノメートルがちょうど1mだ。
はい。ちょうど小さな子供の身長ぐらいですね。
ナノは子供の身長ぐらい、と。
でもってこのピコが1mm。
……こりゃまことに小さいですねえ。
そしてフェムトはそのさらに1000分の1。
……やれやれ!
まあでも、その世界に注目していれば
マイクロなんかは
すごく大きいなあという感覚ですよね。
たとえば分子、特に高分子と呼ばれるものなどは
たいへん大きいものです。
ナノよりもっと小さいとなると原子の世界。
まだまだ小さいものまで検出されていますよ。
そうなると素粒子の世界ですね。
そこでいよいよ質問なのですが、
量子という考え方があてはまるのは、
具体的にはだいたいどのあたりの大きさ
なんでしょうか?
うーん、そうですね、
量子的なふるまいが確認され、
また主に研究対象となっているのは、
だいたいマイクロからピコ、
フェムトあたりですかね。
リョーシはココ、と。
特にナノより小さいあたりからが、
たいへん量子的になってきますね。
古典物理学では説明できない
ふしぎなルールが支配する世界です。
量子には、古典の場合とは違う複雑さがあり、
私たちがあり得ないと思うような
ふしぎな現象に満ちています。
そこが、量子のおもしろいところです。
私が注目しているのは、ここなんですね。
へえー。
ただ間違えてはいけないのは、
量子の世界のルールは、
ミクロの世界だけに適用できるもの
というわけではないんです。
へっ? と言いますと……?
私たちの生きるこのマクロの世界だって、
結局はミクロの集まったものだ
と考えられるからです。
量子という考え方は、私たちのこの世界全体を
包括的に説明しようというものなんですよ。
ということは、わたしも量子……。
量子って案外、身近なんですねえ。
さてと……詳しくは次回としましょうか。
ええ? ちょっと、
(つづく)
1ナノをきる小ささあたりから
量子性が顕著になる場合が多い、
とリョーシカは言います。
つまり量子(リョーシ)っていうのは
とりあえずそのくらいのスケールで
起こっている話なんだ
ということがわかってきました。
そして、実はそこだけの話じゃないんだ、
ということも。
というわけで、来週もまた
さらに深く、リョーシカ!な展開を、
どうぞお楽しみに。
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