2008-03-14掲載
これまでなにかと
量子が1つの場合について
話題にしてきました。
でも考えてみれば、
あんなに小さい量子のこと、
もっとうようよ、いっぱいいるに
違いありません。
量子1つの時に特徴的なのは
「重ね合わせ状態」という、
たとえば0と1の重ね合わせなら
0と1がいくぶんかずつ含まれた状態。
では、2つ以上になると?
というのが今回の話題です。
量子がもっと うようよ いる時、
量子たちはいったいどんな状態なのか
──というわけで、
さっそく進めてまいりましょう。
前回の量子力学のまとめで
すっかり片付いたと思ったら
まだあるんですか?
はい。まだあります。
というより、
やっとこれから始まるのですよ。
さて、もし量子が2つあったら、
1つの時と違って
どんな状態が現れるでしょうか?
え? なんか違うんですか?
ええ。実は、量子は
“2つで1つ”の状態を構成するんです。
ということは……
くっついちゃうんですか?
いや、そうとも限りませんよ。
2つの量子が、空間的に離れたところに
あってもぜんぜん構いません。
くっついてもいないのに
“2つで1つ”の状態というと
わたしが思い浮かぶのは、
長靴とか、手ぶくろとか、猫の手とか……
でも、たぶんイメージが違いますね?
そうですねえ。
少しゆっくり考えてみましょうか。
まず量子が1つある場合、
たとえば0と1の
重ね合わせ状態にありますね。
はい。それなら大丈夫、
わかります。
次に量子が2つある場合。
2つあってもこれらが、もし
ばらばらにあるならば
量子1つの時と同じです。
ばらばらにあるんだから、
1つずつの量子が2個ということですね?
そうです。
あっちの量子の状態はああだし
こっちの量子の状態はこう
というように、お互い別々な
状態をとっています。
ところが相互作用によって
2つの量子の間に
ある特別な関係ができあがると、
量子特有の“2つで1つ”の状態
を構成します。
すると今度は、あっちとこっちで
“併せてひとつの状態”を構成します。
たとえば片方だけを操作しても、
全体の状態が変化します。
まさに“状態を共有している”んです。
なるほど。すると量子には
状態を連絡し合うしくみが
備わっているのですか?
いいえ、違います。
2つの量子はお互いの状態について
連絡をとりあったりしている様子は
ありません。
しかも表には現れない、隠れたルールも
ないのだ、と考えられています。
約束事がないのに、
量子どうしが状態を共有できる
特殊な関係なんですね?
そう。「エンタングルメント」と
呼ばれています。
「量子絡み合い」とも言います。
これがたいへんに絡み合った
「最大エンタングル状態」のなかでも
特徴的な例を挙げると──
まず2つの量子のうち、
一方を測定したら
「0」だったとします。
はい。
測定によって
最大エンタングル状態が壊れて
量子がばらばらになります。
そして他方の量子は、
1つ目の量子の測定後の状態である「0」へ
必ず変化する、
といったことが起こりうるのです。
しかし、片方の量子が変化したことを
なぜもう一つの量子が
知ることができたんだろう?
通信してもいないのに……と考えると
ちょっと不思議ですよね。
“2つで1つ”の状態って奥が深いなあ。
そうですね。
ちなみにエンタングルした状態にある
2つの量子を、遠く引き離しても
まったく同様なことが起こります。
そこで、量子のこの性質を使って
たとえば量子テレポーテーションなどを
行うことができるわけなんですね。
2つの量子を操作することは、
1つの場合と比べて格段に難しいのですが、
これらに成功することで、
量子を使った情報処理や通信への道が
ぐんと拓けてきます。
すると、量子が身近になってきますね。
そう思います。
──さて、今週はこのへんで。
おっと、
(つづく)
第20回の『週刊リョーシカ!』
いかがでしたか?
量子が2つ以上になると
格段に複雑になる。
その複雑さのキーワードが
「エンタングルメント」!
というお話でした。
さて2008年のスタートにあたる第11週から
量子力学
のさまざまな話題を
採り上げてきた『週刊リョーシカ!』。
来週は1回、お休みをいたします。
そして再来週の28日からは、
また新たなテーマで連載を再開。
次回の『週刊リョーシカ!』を
どうぞお楽しみに。
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