第27週:これが盗聴の動かぬ証拠!
2008/05/09掲載

これからの時代、ますます
セキュリティが重要だ
ということはわかるのですが
よく言われるセキュリティの高い低いって
要するにどういうことなんでしょうか。

ひとつには要するに安全か、
安全じゃないかってことですよねえ。

だけど、もし絶対運べなくて
絶対開けられない金庫があったとしたら
確かに絶対安全かもしれないけど、
使おうって時に開かないんじゃ困るよねー
と考えていくと、
ちょっとパラドックスめいてきます。

そこで金言──
便利さとセキュリティはトレードオフ。

セキュリティを犠牲にすれば便利だし、
便利に使いたければセキュリティはそこそこ、
というように、結局、安全と思えるレベルを
人が選び取っているんですよね。

さてそこでAとBという技術があって
Bのほうが「原理的に」セキュリティが
高いですよ、と登場してくるのが
「量子鍵配送」ということになります。

前置きがちょっと長めでしたが、
というわけで今週は、その後半です。

わたし
ではさっそく、前回をおさらいします。


リョーシカ
なんだか、元気がいいですね。


わたし はい。二人に共通の鍵ができましたと。
図にすると、こんな感じ↓

量子鍵配送5_完成した共通の鍵

リョーシカ はい。そこで、
われわれ二人の通信経路に
盗聴者が侵入したとします。

わたし
うう、見るからに、怪しげなやつ。

量子鍵配送6_通信経路に盗聴者が現れる!

リョーシカ そして「わたし」になりすまして受信し、
量子ビットを測定して
情報を得ようとします。

ところが「測定の向き」がわからないので
仕方がないのでとにかく1つずつ、
どちらかの向きで測定していきます。

量子鍵配送7_盗聴者がキュービットを測定

わたし ふむふむ。
でも1回測っちゃうと、
リョーシは元には戻らないんですよねー。

一か八かで、全部当たるっていうのも
あり得ないし……。

リョーシカ ええ、その通りです。

盗聴者はこんどは
「リョーシカ」になりすまして、
測定後のキュービットを送信します。

わたし 「わたし」が受信すると……
「リョーシカ」が送ったのとは
違う状態のキュービットが
混じってしまっている!

これを図の中に斜線で示しておきますね。

量子鍵配送8_受信したキュービット

わたし しかし「わたし」は
そんなことは知らないから
「リョーシカ」から来たものと思って
1つずつ測定していきますよ

リョーシカ 「測定の向き」が合っていないと
0になるか1になるかは、50%ずつ
という不確かなものになってしまいます。

そして元の状態とは違う
「測定後の」量子状態が
受信者へ送られることになりますね。

続く流れは、前回と同じです。
電話回線で二人が測定の向きを教え合い、
合っているものだけを残して
あとは捨ててしまいます。

そして、この後、二人は
鍵の一部分を見せ合って、テストします。

もしこの時に、
二人の鍵に合わないところがあれば
これは怪しい、ということがわかるわけです。


量子鍵配送9_鍵が合わない

わたし そうか、通信の途中で誰かが
キュービットをいじったぞ
ということがばれちゃうんですね。

で、「共通の鍵」ができたら
どうするんですか?


リョーシカ これを使って、二人の間で
安全な通信を行うことができます。


わたし うーん。
セキュリティってたいへんですねえ。


リョーシカ
では、今週はこれにて。


(つづく)



週刊リョーシカ!
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量子の世界は「見ちゃダメ」
というのを、第15週で採り上げました。

測定すると状態が変わってしまう。
めんどうな性質だなあ、
と思うけれども、
それをうまく利用することによって
「量子鍵配送」のように
セキュリティの高い通信に活かすことができる。

リョーシと頭は使いようです。

さて、次回の『週刊リョーシカ!』は
また、次の金曜日に、お届けいたしますよ。
どうぞおたのしみに。


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