2008/05/02掲載
「量子鍵配送」という語を
お聞きになったことはありますか？
「量子鍵配送」とは、
リョーシの性質を活かして、
より安全な通信を行うための
暗号のしくみです。
量子暗号のなかでも、最も早く
実用化が期待される技術のひとつで、
そのセキュリティの高さが、
大きな注目を集めているようですよ。
さあ、そこで、
先週まで3週にわたって採り上げてきた
キュービット（量子ビット）が
いよいよ、出番となります。
というわけで、さっそく、どうぞ。
せっかくキュービットがわかったんだから
これを使ってなんかやってみたいですよね。
（
第23週
、
第24週
、
第25週
を参照）
そうですね。
前回までに分かったのは
1キュービットの量子状態の性質です。
測定の向きが合っていないと
正しく状態を知ることができない。
そのうえ、
測ると、状態が変わってしまう。
つまり、不用意に測定しちゃ
だめってことですよね。
そうですね。
量子鍵配送（BB84）は、
1つずつのキュービットの量子状態を使った
代表的な技術です。
もしも量子がふたつ以上あると……
エンタングルメント！
（
第20週
を参照）
はい。
キュービットひとつずつを
扱おうという場合は、
情報処理のような複雑なことはできません。
なるほど。ところで
鍵といえば、現在のインターネットにも
暗号鍵の技術が使われていますよね。
秘密鍵と公開鍵という。
この代表的なものが、
1977年に発明された「RSA暗号」です。
で、この「RSA暗号」と「量子鍵配送」、
どう違うんですか？
もうまったく全然違います。
「量子鍵配送」は実際の通信に先だち、
通信しようとする両者がやりとりして
ふたりだけが知っている秘密の鍵を
生成しようというものです。
じゃあ、あのRSA暗号は、
忘れていいんですか？
はい、忘れてください。
まず送信者が「鍵のもと」を用意し、
量子状態にのせて送信します。
「鍵のもと」って何ですか？
鍵はふつう「1110000110」のように
ランダムな数字の列などでできています。
そこでまず何らかのこのような数字の列を
用意したものが「鍵のもと」です。
これを元に、これから
安全な鍵を作っていきますよ。
はい。わかりました。
最初の4ケタは、図のように
「1110……」と、なっています。
そこでこの情報を、量子状態に載せます。
1つ目のキュービットは、測定の向き＝「たて」、
「南」の状態にして用意しました。
2つ目は、測定の向き＝「よこ」、
「東」の状態にして用意しました。
このようにしてまず測定の向きを決め、
0または1のいずれかの状態を選んで
キュービットを次々と用意していきます。
量子状態を受け取った受信者は、
キュービットをひとつずつ、
たて＝南北、よこ＝東西の
「測定の向き」を決めて測定します。
このようにして、送信者は「鍵のもと」を
受信者は、測定結果を
手にすることができました。
ふむふむ。よく見ると……
あれ、ちょっと違ってますよ。
リョーシカ！ これでいいんですか？
はい。続いて、二人は電話回線で
選んだ「測定の向き」を教え合います。
むむ、まだある！
「測定の向き」が合っていないものは
捨てて、合っていたものだけ残します。
こうして、ついに
二人だけが知る「共通の鍵」の
できあがりです。
うーん……。
その、どこがセキュリティが高い
のでしょうか？
では、もし通信上に誰か盗聴者が現れたら
どうなるでしょうか……？
というあたりから、来週としましょうか。
ええっ！
（つづく）
原理的には絶対破られない暗号と言われ
今、たいへん注目を集めている
「量子鍵配送」。
今回はリョーシカ流に、その前半を
お届けしましたが
いかがでしたでしょうか？
さて、このつづきは、
また次の金曜日に、お届けいたします。
どうぞおたのしみに。
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