第32週:柳の下にドジョウはいない?
2008-06-13掲載

『週刊リョーシカ!』は
先週から「確率の考え方」編を
お送りしています。

前回は雨でしたが、今回はドジョウです。

柳の下のドジョウ、というのは
水辺の柳の下でどじょうが獲れたからって
同じことしても、そうそううまくはいかないよ
と、だいたいそんな意味ですね。

柳の下にどじょうはいない

すると、柳の下のドジョウはいないよ
と言われないように、
獲りに行くのはやめておこう。
なんて思ってしまったりもします。

そういうわけで二度は獲りに来ない、と。
すると今度はドジョウのやつが油断して、
柳の影に集まっておこうか、
と考えているかもしれない。

いやドジョウっていうのは
もともと柳の影にいるものであって
なんて考え始めちゃうと……

どうも、
きりがありません。

というわけで今回は、ドジョウです。
どうじょ。

わたし 先週以来、
確率って、わかっているようで
意外とあやういという気がしてきました。


リョーシカ ふむふむ。
それならば、やってみましょうか。


わたし
え?


リョーシカ 100円玉を用意して、
おもてと出るか、うらと出るか。

確率50%のときに、おもてとうらが、
実際にはどのような順序で、
出ていくのか、見ていきましょう。


わたし なるほど。いーですね、それ。
えーと、まず100円玉を準備して、と。

……じゃ、投げてみますよ。

100円玉を投げる実験

リョーシカ
では、私が結果を書いていきましょう。


わたし おもて、うら、うら……。

ところで、これってもちろん、例の
ドジョウ問題につながってるんですよね。

リョーシカ
もちろんです。


わたし よかった。
ではお次はうら、うら……。


コイントス100回の結果

わたし へえーこれが実際にやった
結果ですが。


リョーシカ
はい。


わたし で、数えてみると、
オレンジ(おもて)が45回、
ベージュ(うら)が55回。
あれれ、50%50%じゃないなあ。

意外に偏ってますねえ。
実験って意外といーかげん。

リョーシカ そうではありません。
正しいのはいつも結果のほうなんです。

ちなみに
一見おかしい、と思える実験結果を
ありのままに認めるところから、
量子の研究も始まったんですよ。


わたし ふむむ。でも……よく見ると、
7回も連続しているところもありますよ。
(左1列目の7から、左2列目の3番目まで)


リョーシカ ぜんぜん問題ありませんよ。
なぜなら、たとえば1投目を見ると
「おもて」、2投目を見ると
「うら」になっていますね。

わたし
はい。


リョーシカ これがもし1投目が「うら」だったら、
2投目は「うら」にならなかったと思いますか?


わたし そりゃ、1投目には関係なく
「うら」なんでしょうね。


リョーシカ その通りです。
1回1回のコイン投げは、それぞれ独立に
「おもて」または「うら」なんです。

そして、この実験をもっとたくさん、
無限に近くやった時に
全体を統計的に見たら、
おもてとうらが半々になっていた──

このような場合、確率が50%ずつに
なっていると考えられるのです。


わたし ふうん。だとすると……
思いつきの質問なんですが、
「男2人なので、きっと次は女の子だ」
ってよく言うじゃないですか。

というのも、これ、
心理的には結構びみょーでしょう?

男2人だから次はもう女の子だろうって思うけど、
ところがどっこい「二度あることは三度ある」
っていう話もよく聞くし……。

どう考えればいいんでしょうか?


リョーシカ そうですね。生まれてくるのが
男の子か女の子かというのは
さまざまな要因がありそうですね。

とはいえ、まず第1子、第2子は
それぞれ独立した事象であると言えます。

そこで他の要因は考えないで
どちらか一方であるという「系の対称性」
だけから考えることにすると、
確率は半々です。

このように考えると、
女の子が生まれてくる確率は
兄弟姉妹には関係なく、
50%ということになります。


わたし
うーん。そうなるか。やっぱり。

しかし、だとすると……
柳の下にどじょうはいない、
ということわざのコンセプトそのものが
危うくないですか?


リョーシカ そうですね。
どじょうがいるかどうかは、
その前にそこにいたかどうかとは関係ない
というのがポイントです。

どのくらいの確率かは、
統計的なデータをとることによって
明らかにすることができます。


わたし ということは──

柳の下にどじょうはいる
かもしれないし、いないかもしれない


これじゃことわざにならないですよ。


リョーシカ そうですねえ。
むしろ、起こりうる可能性の一方が、
ことわざとして残っているということは
人々が確率的な現象に遭遇して
とてもびっくりする、印象的な経験だ
と、感じた証拠のようにも思えてきますね。

さてと。今週は、これにて。

(つづく)



週刊リョーシカ!
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「柳の下のドジョウは──
三匹までいる」
ということわざもあるそうですから
どっちなんだよ。
と思いますけれどもね。

本当はわからないのに、
どっちかになると思いたい……

そういう心理が、
確率的な考え方を遠ざけてしまっていることが
案外多いのではないでしょうか。

よく言われるセールストークの中の
誇大さやうそも
冷静に確率を見ることで
見破れるかもしれませんよ。

さて来週も引き続き
「確率」ゴーゴーの予定。
どうぞおたのしみに。


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